底辺からの視線

中年親父目線で気づいたことを雑記的に書き殴るブログ

恋人同士で行くディズニーランドは最高だ。だけど、本当の彼女ではないから複雑・・・

気があるのに、微妙な距離がある女子と二人で出かけるのは緊張しますよね。

何を話せば良いのか、どんなキャラを演じれば嫌われないのか、どうすれば好感度をあげることができるのか・・・。初デートの悩みはつきることがありません。

以下の投稿の続きです。

ディズニーランドは夢の国。初デートに誘えた - 底辺からの視線

はちゃめちゃな話ですが、初デートで『恋人ごっこ』をすることになりました。

思いっきり楽しむための秘策?

僕とその娘(仮に『奈央』とします)は、何度か二人で飲んだことがあり、お互いの裸よりも恥ずかしい部分である本音で語ったこともある関係でした。

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった - 底辺からの視線

なんとなく、お互いに気があった、少なくとも僕には気があり、初デートにディズニーランドに行くことになりました。向かう途中で「今日は『恋人』としてディズニーランドを楽しもう」という、訳の分からない提案を受けました。

理由は「ディズニーランドは友達と行くより、恋人と行く方が楽しいから」ということでした。その意見にはまるっきり同意なので、恋人ごっこに付き合うことにしました。

(奈央と楽しめれば良いか・・・)

いざ、ディズニーランド!!

舞浜駅で降車し、テンション高めの娘と一緒に入場。「なんか天気が怪しいな」なんて思いながら、久しぶりに『夢の国』に入国しました。

入園ゲートをくぐるといきなり奈央が腕を組んできました。

なんというか、夢のような、あり得ないことが起こるのは夢の国だからなのか? なんてテンパりながらも冷静を装い、軽口が溢れました。

「奈央さん。おっぱい当たってるよ」

「変態っ」

(・・・睨むなっ!)

睨みながらも腕に絡みつく娘が一言、呟きました。

「今日だけだから・・・」

「今日だけとは言わず、いつでもOKだから」

「いや、今日だけで良い」

女心は、よく分からないし、分からないことを考えても答えが出ないし、面倒くさくなったので

「よし。スペースマウンテン行こう」

「待って。まずは『ハニーハントのファストパス』。天気が悪いから時計回りでマウンテン系に乗ろうよ。ビッグサンダー、スプラッシュ、最悪、雨でもスペースマウンテンは行けるでしょ?」

「良いよ。奈央さんに任せる」

「うん。任せて、思いっきり楽ませるよ」

(本当に今日の奈央さんは可愛い・・・)

語る、そして語る

ディズニーランドデートの良いところは二人で会話する時間がたくさんあること。それも明るい昼間で多くの場合、屋外であることです。

なんとなく開放感があるというか、構えずに話せる雰囲気でテンションも高く口数が増えますよね。この日は奈央と多くのことを語りました。

本当にくだらない与太話から、下ネタ(主に僕)、趣味の話、好きな異性のタイプ・・・から、お互いの価値観についてまで色々と語りました。

例えば、普通は自分をより良く見せるために背伸びするのが普通で、反対に頭がワルい、仕事が出来ないフリをする卑怯さを責められ、サボることを考えることが人類の発展、技術革新に必要かを力説したり、女子に愛想を振りまくロクでなしみたいな態度を否定され、僕がどれだけ女子を大切にしているか、女尊男卑の精神、女子の神秘さ、尊さを解説したり、奈央が僕のテキトーさに憧れていることを知ったり、ずっと楽しく過ごしました。

「ねえ。奈央のこと、最初から『奈央さん』って呼んでるでしょ。何で?」

「俺、基本的に女子と同じ呼び方で呼ぶようにしてるんだ。その方が仲間感が強いじゃん?」

「そうじゃなくて、他の娘は『ちゃん』づけなのに奈央だけ『さん』づけでしょ? その理由が知りたい」

「確かに・・・。なんだろうな・・・。苦手だったからかな? それに「奈央ちゃん」なんて呼んだらバカにしてる感じじゃん?」

「奈央ちゃんは嫌だな・・・」

「でしょ? 奈央さんは奈央さんって感じ」

「『奈央』でいいよ」

「ん? ははははっ、照れるわ!」

「奈央もひらめくんのこと『ひらめ』って呼ぶし」

「奈央さん、『ひらめ』って時点でそもそもあだ名だし・・・」

「じゃあ、テツって呼ぶよ」

「いや、それは勘弁してよ。照れる・・・」

「でも、『奈央さん』は距離を感じるんだよね」

「わかった。じゃ『奈央』って呼ぶよ」

「うん。その方が良い」

(慣れるまでは時間がかかるだろうな・・・)

「よし。ひらめ。そもそも論だけど、馴れ馴れしく女子を下の名前で呼ぶのは良くないぞ」

「ちょっと待って。奈央さん。なんか、改めて『ひらめ』って呼ばれるとムズムズする・・・」

「大丈夫だよ。女子の中ではみんな『ひらめ』って呼んでるから、奈央に違和感がない」

「えっ? みんな『ひらめくん』って呼んでくれてるじゃん」

「裏では、みんな『ひらめ』だよ。なんだかんだと話題に上がるんだよ」

「そうか。人気者は辛いな・・・」

「みんな不思議がってるんだよ。馴れ馴れしいのにキモくないって。他の男子に下の名前で呼ばれたら鳥肌が立つのに、ひらめに呼ばれても何とも思わない。ひらめの七不思議のひとつ。キャラ得だよね」

「う〜ん。俺はずっとそうだしな。気にしたことなかったよ。それより『七不思議』の方が気になる・・・」

僕が女子に嫌われないように気をつけていることは以下の投稿でまとめています。

女子と仲良くなる方法。嫌われる男にならないために必要な考え - 底辺からの視線

「知らない方が良いと思うよ」

「エグい?」

「そんなことないと思うけど・・・知りたい?」

「うん」

「奈央が言ってるんじゃないから怒らないでね。『馴れ馴れしいのにキモくない』『エロいのに行動しない』『生活感がまるでない』『テキトーなのに気がつく』とかね・・・」

「まあ、間違っちゃいないと思う・・・。こえーな女子」

「なんか、よく話題にあがるんだよね」

「モテる男は困るな・・・」

「でも、誰でも下の名前で呼ぶのは良くないと思う」

「ん? 何で?」

「なんか勘違いする娘もいるんだよ・・・。さやかとか・・・」

「この話は終わり。今日はやめよう。奈央さん・・・」

「そうだね・・・。楽しくなくなっちゃうね」

雨。そして相合い傘

予報通り、午後になって雨がチラついてきました。僕は手ぶらで傘を持ってきていなかったので、必然的に奈央の傘に入れてもらうことに・・・。

ずっと腕を組んで歩いていたんだけど、さらに二人の距離が近づき照れる・・・。

「奈央さん、寒くない?」

「うん。大丈夫。ひらめは?」

「俺は大丈夫。すぐ止みそうだし。どっかで雨宿りする?」

「パレードは見たいんだよな・・・」

「雨で中止なんじゃないの?」

「うんうん。雨の日の特別バージョンがあるんだよ」

「嘘? まじで?」

「みんな、レインコートを着ていて可愛いんだよ。知らないの?」

「初めて知った・・・」

豆知識ですが、ディズニーランドのパレードは雨の日バージョンというのがあって規模は小さいんだけど、キャラクターがカッパを着ているバージョンがあるのです。さすがディズニーで雨でも楽しませてくれます。

パレードが始まる頃には雨も弱まり、傘が必要なくなりましたが、ちゃんと(?)雨の日バージョンのパレードを見ることができました。

普段の『できる女』とは違い、純粋にディズニーランドを楽しむ奈央の姿を見て、本当の彼女だったら、どれほど良かったか・・・なんてセンチな気持ちになる僕がいたのでした。

夢の国からの帰宅・・・

楽しかった『夢の国』ですが、夢は必ず覚めるモノで嫌でも現実社会に引き戻されます。

辺りが暗くなり、周りは愛を語り合うカップルばかり。僕たちも今日だけはカップルに見えるかな? なんて思いながらも、電車で帰るという現実が待っていたのです。

「奈央さん、満足した? そろそろ帰ろっか」

「うん」

薄明かりの中で見る奈央はいつも以上に可愛い・・・。

「ねえ、ひらめ。ちょっとだけお願いがあるんだけど・・・いい?」

「何? トイレ? タバコ吸って待ってるよ」

2000年当時はディズニーランドの至る所に灰皿がありました。今じゃ考えられませんよね・・・

「バカっ、違う!」

「何?」

「最後にギュッとして・・・」

上目づかいで、見つめてくる奈央。

「お願い・・・」

なんか照れるし、照れてる奈央も可愛い・・・。ちょっとからかってやろうと思い、じーっと目を合わせているとキッ睨み返してくる娘。

「分かった。こう?」

「うん・・・」

「・・・」

初めてハグした奈央は思っていたより小さく、柔らかく、温かく、奈央の鼓動を感じながら、しばらく抱きしめていると急に胸を押され、いつもの奈央、可愛くないキツい奈央が現れました。

「ありがと。飲み行こう」

「奈央さん、今日は恋人ということで、僕の中心が熱く硬く大きくなってしまったので処・・・」

「変態っ! 行くよ」

夢は覚めて、いつもの二人の関係に戻ってしまいました。

もう少し覚めずにいて欲しかったなあ。ビバ夢の国。

後日の話は以下の投稿に続きます。

男が女子の呼び方を変えるとき - 底辺からの視線

 

ディズニーランドは夢の国。初デートに誘った

ディズニーランド、夢の国。ウブな男女の初デートはディズニーランドをおすすめします。その理由は2つ。

ひとつ目は、待ち時間。普段は待つことが嫌いな人間でも、ディズニーランドのアトラクション前の待ち時間は耐えられるモノで、その間にたわいもない話をして、お互いの距離が縮まること。

ふたつ目は、恥ずかしがる必要がないこと。どんなに自分の本性を隠して生活している人間でも、夢の国では恥ずかしい行動をするハードルが下がります。何故なら、周りの人間が浮かれて恥ずかしい行動をしているから。なので、自分もあまり気にする必要がないからです。多くのカップルが普段よりイチャつき、多くの人が普段は着けることのない動物の耳を着け、あり得ないハイテンションが当たり前で、それがディズニーランドの楽しみ方で、逆に僕のように冷めている人間は多くはなく、共に非日常を味わうことで二人の距離が縮まるのです。

夢の国の魔力に抗うためには覚悟と知力が必要で、そんな冷静でつまらない人間は、そもそもディズニーランドになんて近付きません。

大好きな異性と積極的に距離を縮めるなら、夢の国を利用しましょう。

そんな夢の国にいくら口説いても彼女になってくれない娘(仮に『奈央』とします)と訪れ、恋人ごっこを楽しんだ話。

以下の投稿の続きです。

友達、親友、恋人の違いは何なのか。肉体関係だけなのか? - 底辺からの視線

まだ、友達以上の関係になれなかった娘をディズニーランドに誘い、良くも悪くも二人の関係を整理、確認し帰宅した後、奈央から電話がありました。

ディズニーランドに行く約束をする

ディズニーランドに行くためには、二人の関係をはっきりさせたいという訳の分からない話になり、面倒くさいと思いながらも、恋人とは「自分を犠牲にしてでも相手のことを大切にできる人」ということに落ち着きました。

僕の中では奈央に対して、そこまでの『愛』はなく、どちらかと言うとエッチなことがしたい、一緒にいたい、遊びたいという自分本位でゲスな思いしかなく、付き合うという夢は完全に断ち切られました。

失恋というほどの大きな傷をなく、なんとなく二人の関係は友達であり、このままの関係を続けるのがベスト。なんて一人で納得し、解散。

納得し帰宅したハズなのに、なんか納得できずに悶々としていると奈央からの着信がありました。

「はい、ひらめ。お疲れ。どうしたの?」

「さっきの話なんだけど、やっぱり行く」

「ディズニーランドの話?」

「うん。ひらめくんが良ければ・・・」

「もちろん。行こう」

女子の移り気というか、気の変わりように振り回されていたのですが、悪い気はしない、逆に喜んですらいる自分のMっ気に感動を覚えました。

決行日は来週の金曜日。二人で話した結果、比較的空いている平日の方が良いということで有給休暇を取ることにしました。

好きな娘とディズニーランドへ

いつも以上に仕事に身が入らない時間を過ごし、楽しみにしていたデートの当日。いつも通りの時間に起きて、テレビをつけると降雨確率が40%。イチローの打率より高い。なんか、雨だと面倒くさくなってしまい、これだけ楽しみにしていたのに気分が下がります。

とりあえず、奈央にショートメール。

「雨みたいだけど、どうする?」

速攻で電話がかかってきました。

「おはよう」

「おはよう。行くよ。絶対に行くもん」

「雨だと面倒くさくない?」

「午後からでしょ? 小雨でしょ? 行こうよ」

「OK。じゃ新宿で・・・」

「うん」

7月の初め、梅雨時期なのでしょうがないけど、雨か・・・。

いつものスーツではなく、ダボダボのTシャツにジーンズ。そして一足しかないバッシュ。ポケットにケータイと財布、そしてタバコ。速攻で準備をして家を出ました。

待ち合わせ、そして移動

本当なら、納車したばかりの車で行きたかったのですが、奈央からクルマだと帰りに飲めないから電車で行こうと言われ、通勤ラッシュの電車に乗り新宿で待ち合わせです。

東南口の広場、階段下の喫煙所でタバコを吸いながら、行き交うサラリーマンを眺め、仕事をサボってデートに行く優越感に浸っていると、ジーンズにノースリーブのシャツを着た奈央が笑顔で現れました。

(・・・可愛すぎるだろ)

「おはよう。奈央さん、反則級に可愛くない?」

「ありがと。行こう」

「うん」

それまではスーツ姿、仕事用のメイクしか見たことがなく、私服姿でナチュラルメイクをした奈央に緊張してしまうチンケな男・・・。ちょっと、ボ〜ッとしていると、奈央が大きな目で睨んできました。

「ねえ。早く行こうよ。朝から変な目で見ないでよ」

「いやマジで可愛いわ・・・」

「だから、そんな関係じゃないでしょ? 行くよ」

「うん」

激混みの中央線で新宿から東京へ。普段は腹が立つ満員電車も奈央と身体をくっつけながらの移動だと「悪くない」むしろ、嬉しい気分・・・。僕は冷静を装っていたのですが、奈央は既にハイテンションで密着をしてゼロ距離なのに僕を見上げながら、アトラクションに乗る順番についてあれこれ話してきました。

「・・・ひらめくん。聞いてる?」

(可愛すぎる・・・)

「ごめん。近すぎてそれどころじゃない・・・」

女子の顔が直ぐそこにあり、身体全身で体温を感じるシチュエーションで冷静になろうと必死で、話を聞く余裕がありませんでした。

天国のような、地獄のような時間を堪え、東京駅で乗り換え。いつもはそれなりに距離がある二人ですが、その日は奈央の距離が近いような気がしました。物理的な距離だけではなく、なんとなく、友達の距離ではない。

このままでは、僕の中心部が暴発しかねない。冷静沈着な自分をを保つ精神力が限界になり、本能に支配され、舞浜駅周辺のホテルに連れ込み、ディズニーより楽しい、あんなことやこんなこと・・・なんて妄想が始まってしまいました。

「奈央さん。距離が近い・・・」

「ダメ?」

「いや、ダメじゃないし、すごく嬉しいんだけど・・・」

「今日だけはひらめくんの彼女になるって決めたの」

(・・・意味が分かりません)

「どういう意味?」

「ディズニーランドは友達として行くより、恋人同士の方が楽しいでしょ?」

「待て待て。この前は彼氏にはしたくないなんて、いってたじゃん・・・」

「やめたまえ。今日は奈央の彼氏。余計なことは考えるなっ! 楽しむことに集中しろ!」

(・・・)

「・・・はい」

「うん。素直でよろしい」

はちゃめちゃな話ですが、本日だけは限定で恋人ごっこをするという奈央のアイデアに乗り、ディズニーランドを満喫することにしました。

恋人同士で行くディズニーランドは最高だ。だけど、本当の彼女ではないから複雑・・・ - 底辺からの視線

友達、親友、恋人の違いは何なのか。肉体関係だけなのか?

男女間の友情と恋人の違いは肉体関係の有無? 肉体関係があれば恋人で肉体関係がなければ友達というのも違う気がします。

友達同士でも間違いが起き、肉体関係を持ってしまうこともあるし、セックスレスなんていうカップルだっています。なので、肉体関係があれば恋人という理論は破綻しているのです。

僕がいくら口説いても彼女になってくれない娘(仮に『奈央』とします)に彼女と友達の差は何かと聞かれ、面倒くさくなって話題を変えようとしたのに、食らいついてきました。

以下の投稿の続きです。

男女間の友情なんて綺麗事です。あるハズがない。 - 底辺からの視線

 

友達と恋人の差は肉体関係だけなの?

彼女になって欲しいのに「今の関係と何が違うの?」なんて聞かれました。面倒くさくなり話を終わりにしようとしました。

「終わり」

「なんか不思議じゃない? 友達と恋人って何が違うんだろうね?」

「SEXするかしないかだよ。終わりにしようよ」

「ひらめくん。彼女じゃなかったらSEXしない?」

(・・・女子の口から『SEX』なんて聞くとなんかエロい・・・)

「するかもしれない・・・」

「でしょ? 奈央だって順番とか気にしないというか・・・」

「えっ? じゃあ、今か・・・」

「ムリっ。変態っ!」

(被せてきやがったな・・・)

「奈央さんがスケベな話、続けてんじゃん・・・」

「奈央たちも恋人に見られているかな?」

「う〜ん。まあ微妙だわな」

「ひらめくん。奈央に『付き合って』っていうんだったら、今の関係と何を変えたいの?」

「・・・」

「奈央のカラダが目当てなの?」

「いや違う。違くはないけど・・・。なんだ?」

「でしょ? 今の関係で問題なくない?」

「なんか違うじゃん? 誰かに奈央さんを取られたくないとか・・・」

「そんなのは今でも一緒だもん・・・」

(恥ずかし気もなく、言ってくれてありがとう。そこまで思ってくれてるなんて幸せですよ・・・)

と思いつつも、悪い癖で僕の口が勝手に奈央をからかい始めます。

「奈央さん。俺に惚れたか?」

「それはない。なんか親友になりそうな気がするけど彼氏にはできない」

(よく分かんないんだよな・・・)

友達と恋人の間にあるもの

二人で色々と恋人と友達の差を考えたんだけど、結局は答えは出ませんでした。お互いのことを認め合うのが恋人であれば、僕と奈央は裸より恥ずかしい本音の部分を見せ合い、認め合っているつもりだし、僕が他の女の子と仲良くしていると奈央は嫉妬するらしい。まあ僕も奈央が他の男とイチャついていたら腹が立つと思う。

僕は「来るもの拒まず去るもの追わず」というスタンスなので、関心がなくて一緒にいて楽しい人間は友達、その人に関心が出てきてお互いに本音に近い話ができるのが親友だと思っています。さらに恋人だと何? 相手が自分を求めて欲しい? それは今と何も変わらない。なんで奈央を彼女にしたいんだ? こんな面倒くさい娘なのに。面倒くさい。本当に面倒くさい・・・。

「まあ、奈央さんが楽しけりゃ良いし、少なくとも俺は今でも十分楽しい」

「でしょ? 奈央もひらめくんと一緒にいて楽しいからそれで良いと思うんだ。ただ、ひらめくんに彼女ができたら、ちょっと寂しい気がするだけで、奈央にはそれを止める権利はないんだよ」

「で、今日はホテルに泊ま・・・」

「ムリだって。クルマ買って、お金ないんでしょ?」

「そこはどうにかするよ。迷惑かけないから、すぐいくし、3秒、いや2秒・・・」

「それじゃ奈央、いけないじゃん?」

「えっ?」

「えっ?」

顔を赤らめる奈央が愛おしい・・・。大きな愛で包んであげたい・・・。

「ヤバい・・・。ひらめくんのペースじゃん?」

「待て待て。奈央さんがスケベな妄想してるだけじゃん?」

「・・・」

本気なのか、冗談なのか、わからなかったけどこんなバカな話をできる関係も悪くない・・・。

「そうやって女子を騙してるの?」

「ん? 聞き捨てならん。俺がいつ奈央さんを騙した?」

「ズルいよね。いつもそうやって自分は悪くないみたいな・・・。勘違いをさせておいて・・・」

「えっ? 俺?」

「ひらめくんの本性を知らない娘だったら勘違いするよ・・・」

「しないって。みんな分かってるよ」

「みんな誤解するよ・・・さやかだって・・・」

「さやかちゃんは関係ないから」

「ごめん・・・。そうね。ちなみに初デート行くとしたらどこ行く?」

「相手によるかな〜。初めてでしょ? あまり話さなくて良い所だろうな、映画とか・・・」

「居酒屋とか?」

「居酒屋はないねぇ。話さないといけないからね」

「ひらめくんとは飲み屋でしか会ってない気がする」

「ハハハハッ! 間違いないっ。仕事帰りだと飲みくらいしかないじゃん? 後、ホテル?」

「ひらめくんって休みの日、何してるの?」

(完全に流されたな・・・)

「掃除して、洗濯して、スロット行って、飯食って、酒飲んで寝る感じ?」

「おじさんじゃん・・・」

「奈央さんは?」

「演劇とか映画とか、買い物・・・。まあ普通な感じだよ。友達からとランチとかね」

「ふ〜ん」

(・・・そういえば奈央さんとは飲み屋以外に行ってないな・・・)

「奈央さん。今度、デート行こうよ。デート。ディズニーランドとかさ」

(ごめんなさい・・・。調子に乗りました。睨まないでください・・・)

子供ぽいといわれるけど、僕は『ディズニーランド』が好きというか、非現実を無理矢理に味わう空間が好きというか、本気で楽しめる人間とそうじゃない人間の見極めというか、変な話、飲み屋の次に素の人間を発見する場としてディズニーランドに娘を連れて行き、本性を炙り出すのが好きなのです。

「ディズニーランドは行きたいけど・・・。ひらめくんとねえ・・・」

「いいじゃん。行こうよ」

「う〜ん。一緒に行く相手がひらめくんか・・・」

(・・・そこまで僕と行くことに悩まなくても良くないですか?)

「ごめん。ひらめくん。考えさせて」

「うん」

奈央曰く、ディズニーランドは恋人同士で行くのがイチバン楽しい。その『夢の国』に彼氏でもない僕と行くのが納得いかない。そもそも、友達と恋人の違いは何なのか。遊びに行くのとデートに行くの違いは何なのか。

友達、親友、恋人の違いは何なのか。

結局、その答えが見つからないと先に進めない二人だったのです。

自分より相手の方が大切か?

色々と話したんだけど、SEXは好きでもない友達間でも間違いとしてあるという僕の経験を奈央に「ゲスな人間だ」と否定されながらも認められ、肉体関係があるかは友達と恋人の境界線にならないという結論になりました。

そして、どこが友達と恋人の境界線かという議論が続くのですが、最終的には相手の方が大切だと思えるのが『恋』そして、その相手が恋人だという結論に落ち着きました。

つまり、友達と恋人の違いは、自分と相手、どちらが大切に思えるか。自分が我慢してでも相手が望むことを叶えたいと思えるのが恋人。相手の気持ちが気になり、夜も眠れないというのも、相手のことを思っているからだし、恋人のためなら自分を押し殺し相手に合わせることができる。

自分よがりのSEXをするのではなく、相手のためのSEX。自分がいくことよりも相手を気持ち良くさせる思いやる心があるかないか。それが恋人と友達の違い。

そんなバカな話を真剣に話して夜も更けていきました。

ディズニーランドは夢の国。初デートに誘えた - 底辺からの視線

社会人一年目で無理してクルマを手に入れる必要性はある?

クルマは男のステータス。なんて言われていたのは30年も前の20世紀の話。

ですが、男の子は無理をしてでもクルマがあった方が良い。借金に追われ苦しい思いをするんだけど、そんなツラさも後になれば笑い話で、クルマで作る思い出の方が大切です。

今から20年以上も前の話。僕は社会人になって直ぐにクルマを買い、ツラく苦しい思いをしながら維持し、たくさんの思い出を作りました。そのクルマは結婚して子供が生まれるタイミングで手放してしまいましたが、今でも色々なことを思い出させてくれる良き相棒でした。

社会人になって直ぐの夏のボーナスを全額頭金(5万円)にして、2年ローンでクルマを買いました。

中古で乗り出し50万円のユーノス・ロードスター。当時でも9年落ちの1991年生まれの古いクルマです。新卒で、クルマを持つというのは当時でも贅沢だったと思いますが何の躊躇いも不安もなく、ただただ嬉しかった記憶しかありません。

もちろん、駐車場代、ガソリン代、保険、税金、車検などなどお金に余裕がなく大変だったハズですが、そんな苦労より、楽しかった思い出の方が記憶に残っています。

2000年当時も、今と同じ不景気で「贅沢は敵だ」という雰囲気がありましたが、それでもクルマを買い、周りの人間からは「バカだ」とか「ムダだ」なんて言われました。だけど、クルマがあったから女子とのドライブも楽しめたし、友達と旅行にも行けたし、暇なときの時間潰しにも、急な出張や帰省、本当に大活躍をしてくれました。

そんなクルマとの出会い。

偶然、見つけたユーノス・ロードスター

なんとなく、社会人としてのリズムを理解しはじめ、仕事帰りにパチスロに立ち寄るくらいの余裕が出てきた5月の終わり。普段は駅と自宅の間しか歩かないんだけど、天気も良いので近所の探索をしていました。

大通り沿いを駅と反対方向に歩き、エッチなDVDや大人のおもちゃを売っている店を発見して一人で興奮したりしながら歩いているとディーラーを発見。

(・・・ロードスターか、懐かしいな・・・)

学生時代、友達の父親が深緑のロードスターに乗っていたのを思い出し、何気なくプライスボートを確認しました。60万円、40万円・・・。彼女がいるわけでもないし、ひとりでの移動がメインだから2シーターでも問題ないんだよな。40万円だと車検通して、乗り出し60万円くらいか・・・。

「ご覧になられますか?」

ディーラーの中からではなく、歩道から不意に声をかけられて焦る・・・。制服姿のお姉さんがニコニコと箒とちりとりを持って立っていました。

「あ、はい・・・」

「学生さんですか?」

「社会人です・・・」

ロードスター可愛いですよね?」

「そうですね」

「私も乗っているんですよ。見ます?」

(綺麗なお姉さんだな・・・)

「新しいロードスターより、ユーノスの方が良いですよね?」

「そうですね」

お姉さんと並び、ディーラー内へと案内されました。その間、お姉さんのお喋りが止まりません。

「Vスペのネオグリーンの落ち着いたカラーも良いんだけど、クラシックレッドの可愛いさは抜群ですよね。ユーノスって可愛いクルマじゃないですか〜。なので、クラシックレッドか、Jリミのサンバーストイエローの二択だと思うんですよね。ネオグリーンも人気だったけど、ジェントルマンってイメージなんですよ。まだ落ち着く年齢じゃないっていうか、分かります?」

「そうですね」

なぜか歩きながら奥のプライベートスペースに歩を進めるお姉さん。

「ユーノスの場合、パワーウィンドウはオプションだったので、あっ、でも大体付いてるか・・・。ロードスターって比較的、フル装備で買われた方が多いんですよ。なので基本的にはメーカーオプションは付いている車が多いんです」

「そうなんですね・・・」

可愛いお姉さんの口から、溢れ出てくるロードスター愛に溺れそうになりながら、従業員用の駐車場へ。

「見て!  私のJリミちゃん。可愛いでしょ?」

「可愛いですよね」

「ちなみに、ロードスターに乗るならマフラーと車高調は変えた方が良いですよ」

「はあ」

「(車高を)落とし過ぎると下品になるけど、少し落とした方が一体感が生まれ、オシャレに見えるんですよ。どうです? この子も少し落としているんです。可愛いですよね」

「・・・そうですね」

ロードスターは車高が低いから、今日みたいな(制服の)スカートだと・・・パンツが見えそうになるし、ロングスカートだとドアに挟まりそうだし、女子としては服装に気をつけないといけないから大変なんですよ」

(見せてもらっても構わない。いや、むしろ見たい。見せてください)

確かにロードスターは座席が低いので、乗り込むときにかがむ必要があります。必然的に足を開かなければ乗り込めないので、パンツが見える確率が高い・・・。

「私も最初、クラシックレッドの子が欲しかったんだけど、Jリミが出たらこっちかなって」

(話の脈絡の無さは、女子特有なんだよな・・・)

「そうっすね。黄色のロードスターも可愛いすね」

「ですよね。良かった。もうすぐ車検なんだけど、通すつもりなんですよ。まだまだ乗るつもりなんです」

「ちなみに、Jリミテッドの特別色は『サンバーストイエロー』と言うんですけど、塗装工程が他の色に比べて、約4倍の工程が必要で、コストがあがっちゃうらしいんです」

「へえ、そうなんすね」

「内装も、ナルディ製ウッドステアリングでしょ。それにシフトノブとウッドパーキングレバー。特別な装備になっています」

「ほう」

「他にも、パワステも標準装備だし、パワーウィンドウ、後なんだっけ? つまり、可愛いだけじゃなくて、色々とついてお得だったんですよ」

ロードスターより、よく喋るお姉さんに興味の矛先が変わってきてしまいます。

(よく喋るし、可愛いし、彼氏とかいるのかな・・・)

「あっそうだ。お客さんなんだよね。ごめんね」

「いえいえ」

「ちょっと待っててキー取ってくる」

制服のタイトなスカートの後ろ姿で心の保養をしていると、急に振り返り

「コーヒー飲む?」

「いや、いいです」

「うん。ちょっと待ってて」

(お姉さん・・・完全にタメ口になってますよ・・・)

鍵を片手にお姉さんのマシンガントークが始まりました。

「この子はワンオーナーで、ずっとうち(ディーラー)がメンテナンスしてきたから、状態はバッチリ。ちょっと距離は伸びているけど大丈夫」

「そうなんですか」

「記録簿も揃っているしね。ちなみにユーノスってマツダの販売チャンネルのひとつって知ってた?」

「知ってますよ。後、アンフィニとか、オートザムとかですよね」

「正解。でね、ユーノスって、ダサいマツダのイメージを感じさせないようにするための戦略だったんだって」

マツダの社員がダサいって言って大丈夫なのか?)

「へぇ〜」

「ユーノスってロードスター以外に人気車種が出せなかったんだよ。車に詳しくないと『ユーノス』イコール『ロードスター』と言うか、どっちが車の名前なのか分からない人もいるんだって」

「まあ、分からなくもないっすね」

「まだ塗装も綺麗でしょ? 屋根付きの車庫に駐車をしていたらしいので、あまり焼けていない」

9年落ちの車としては、凄くきれいです。それより、ロードスターのボンネットを指でなぞお姉さんの手にゾクゾクしてしまいます。

「内装も見る?」

「お願いします」

「ちょっと待って。幌開けるよ」

低い運転席に膝をつけ、手慣れた手つきで幌を開けてくれました。スカートから伸びるお姉さんの御御足が気になってしょうがありません。

見えそうで、見えない。究極のエロリズム。

「ちなみにロードスターは茶室をイメージしているのでドアノブも他の車とは違うデザインになってるんだよ。指を入れて開けるんだ」

「おぉすげ〜」

「ちょっと乗ってみて。ロードスターは、茶室に入るための『にじり口』のイメージで、背を低くして茶室に入る感覚、非日常への入り口を演出してるんだ」

ちょっと乗り降りしにくいのは、そんな理由なのですね。後付けかもしれないけど。

「どう?」

「良いっす」

「何が?」

(えっ、なんで怒ってんすか?)

「なんか狭いんだけど、しっぽり来るっていうか・・・」

「うん。そうなんだよね。ロードスターって、窮屈に感じるけど全てに手が届くというか、運転に必要な操作がしやすいんだよね」

(セーフ。間違ってなかった・・・)

なぜか、お姉さんの機嫌をとらなければいけないような気になってきました。

「他に気になるところ、ある?」

幌を開けているので、運転席に座っていると外にいるお姉さんを見上げる感じになります。普段は味わえない光景に身体の中心が反応してしまいます。

(・・・可愛いっす。惚れてしまいそう・・・)

「内装はシンプルっていうか余計なモノがない」

「そう、ロードスターの内装はシンプル。シンプルというか安っぽい。それには理由があるんだ。ロードスターは走り以外に出来るだけ、コストをかけないことにチャレンジしたんだって。誰にでも手が届くように、コストダウンをしたんだ。でも簡単じゃなかったそうじゃ。凄く苦労をしたそうな。じゃかな、それが日本の侘び寂びの精神なんじゃよ」

(なぜに、おばあちゃん?)

「エンジンをかけてみたらどうじゃ?」

キーを捻る。

ブオオオン、ボボボボ・・・。

「どうじゃ、この子もマフラーが変えられているんじゃ。この上品な音。ワシのロードスターと同じ柿本改のマフラーなんじゃよ。おすすめじゃ」

確かにうるさくなくない。上品なエンジン音だと思う。

「どうじゃ、寒いし、中でお茶でも飲まんかね?」

ユーノスロードスターは、ナンパなクルマと言うイメージを持っていたのですが、お姉さんの説明の上手さもあるけど、ロードスターの良さが分かってきた気がしました。

「試乗はできないですもんね・・・」

「う〜ん。この子は車検がないから試乗は出来ないなあ。私のジョージだったら、助手席に乗っても良いけど?」

(お姉さんのJリミテッドはジョージって言うんですか?)

「あっ乗れないなら良いですよ。状態良さそうだし。違う車に乗っても意味がないですよね・・・」

「ちょっと待ってて。店長に言ってくるから。ジョージに乗ってよ」

お姉さん、ちょっと待ってください。

話、聞いてます?

被せ気味に話していますが、ジョージに乗る必要あります? と言うか、ジョージに乗せてくれるなら、お姉さんにも乗せてくださいよ・・・

長くなってきたので、以下の投稿に続きます。

 

男女間の友情なんて綺麗事です。あるハズがない。

美しい男女間の友情なんてあるハズがありません。

どんなに理性が働く男女間にも生物としての本能、深層心理、生物として刻まれたDNAレベルでは『種の保存』という生命としての大きな目標があり、SEXがしたいという欲望は抑えることが出来ません。

例え、お互いに身体を求める関係じゃないと認識し、理性で押さえ込もうとしていても、オスとメスになる瞬間は訪れてしまいます。特に若いときは抑え込めないことが多く、溢れ出る性欲とのツラく苦しい戦いが待っています。

僕は今から約20年前に、ある娘(仮に『奈央』とします)と約2年間、恋人同士でもないのに毎週のように遊びに行っていて、いつも期待に胸と股間を膨らましながらも、身体を許して貰うことが出来ず、悶々とした生活を送っていました。

そんな娘との出会いは以下の投稿でご確認ください。

約20年前にある娘と会って今の自分がいる - 底辺からの視線

若い男性が若い女性と一緒にいて我慢できた理由は、ただただ嫌われたくなかったから。他の娘だったら、手を出しドロドロになり、お互いに面倒くさいことになっていたハズです。

男女間の友情は存在するのか

多くの場合、人間関係には利害関係があり、自分が得をしたい、自分のエゴを通したいと思うのが普通であって、無償の愛とか、男女間の友情なんて信じていませんでした。

ガキの頃から続いている腐れ縁の仲間、学生時代に濃ゆくて長い時間を共に過ごした友人のように損得関係なしに付き合える友達は貴重で、かけがえのない宝物。

だけど、社会に出てよってくる人間も、僕に近づくことでメリットが得られると考えるわけだし、離れていく人間は僕といることで得られるメリットがなくなった、もしくは一緒にいることで感じるデメリットがあると判断したのです。

だから「僕は来るもの拒まず、去るもの追わず」のスタンスを守り、深追いをせず浅い関係でも、その場が楽しければ問題ないと考える節があります。社会人になって誰かを信じ、深追いすることは自分のクビを締めることになりかねません。

親友だと思っていた人間に裏切られたり、信用していた部下に大金を持ち逃げされたり、セックスフレンド位の軽い関係を続ければ良かったのにドロドロの離婚劇に巻き込まれたり、全ては簡単に相手を信じているから起きる悲劇であって、自分の身は自分で守るというスタンスで生きていれば、不運や理不尽なことを避ける確率が上がるのです。

そして、男女間では利害関係に加えて、性欲という利害関係を超える面倒くさい問題があるのです。女性目線ではよく分からないけど、男性目線で話を進めると「可愛い」と思う女子を性の対象として見てしまうことが少なくありません。

つまり、男女間の友情を成立させるためには、利害関係、性欲という2つの大きな問題をクリアする必要があり、想像を絶する高い壁が存在するのです。

余程の精神力と忍耐力、生物としての本能を抑えてでも、大きなメリットがなければ男女間の友情は成立しないのです。

経験した男女間の友情

僕には、人生を変えてくれた女子がいて、その娘とは綺麗事である『男女間の友情』なのか、肉体関係がなかっただけで付き合っていたのか、いまだに理解できない関係を築いていました。

きっかけはお互いに裸を見られるより恥ずかしい、自分の本性を相手に見せるという羞恥プレイでした。

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった - 底辺からの視線

僕は社会人になって東京に残ることを決めたのですが、学生時代の友人は、ほとんど地元、もしくは地方への就職を行なってしまい、心を許せる仲間が近くにおらず、ひとりで社会の荒波を越えるため、自分の殻に篭り、会社では『会社に求められるキャラ』を演じていたのですが、あることがきっかけで奈央に本性を語ってしまいました。

それ以来、他の娘たち、男性も含めて奈央といるのが唯一、素の自分に戻れる時間になり、ラクだったため、多くの時間を一緒に過ごしていました。

そんな奈央と仲良くなりはじめの話。サシ飲み3回目。

同期会の帰りに二人で落ち合う

月イチで開催される同期会という名の飲み会に付き合いで参加し、一次会でバックれるのが僕の定番スタイルで「女子たちを駅まで送るから、じゃあね」と早々に女子たちを引き連れて帰る嫌な奴。今考えると本当に嫌な奴ですよね。

初めのうちは嫌々、二次会に参加していたのですが、同期の自慢話を聞くのに耐えられず「いかない」と言ったのが4度目の同期会だったと思います。それ以降、徐々に帰る組が増え、夏前には、ほとんどの女子が帰る組になってしまいました。

ただ「僕が帰ろうぜ」と誘っているわけではなく、会計が終わると僕の周りに女子が集まってくるようになっただけ。もしかしたらモテ期だったのかもしれません・・・。

とは言え、電車に乗り、どこかで飲み直すなんてこともなく、何も卑しいことは起きませんでした。奈央を除いては・・・。

その日もいつものメンバーで電車に乗り帰ろうとしたところ、奈央からショートメール。

「新宿、南口。帰るなよ」

「東南口。下の喫煙所」

前回は同じ電車で新宿に向かいましたが、今回は二次会組と一緒にいたので誘われないと思っていたのですが連絡がきました。

(女心はよく分かんないよな・・・)

ケータイをしまい、電車を待っていると集団の中の子猫ちゃんから

「ねえ。ひらめくん。今さらなんだけど、なんで『ひらめ』なの?」

僕のお気に入りの小さくてほんわかした娘(仮に『さやか』とします)が腕を絡めてきながら唐突な質問。

「高校時代のあだ名。研修のときの自己紹介で話したじゃん?」

「そうだっけ?」

「私だけ、下の名前て呼んでいい?」

「別に構わんけど・・・」

なんていちゃついていると、タイミングが悪いというか、空気を読まない女子。何とも間が悪い娘(仮に『恭子』とします)が

「ねぇ、ひらめくん。彼女とかいるの?」

「・・・いないよ」

(待て待て。恭子ちゃん。さやかちゃんが真っ赤になってるじゃんか・・・)

せっかく良い感じで二人きりの会話を楽しんでくるところに割り込んでくるんじゃないよ。

さやかちゃん。僕はちゃんと気づいていますよ。ただ気づかないフリをしているだけで、そこは男女の駆け引きであって、そこまで鈍感な男ではありません。というか、勘違いするくらい敏感なのです。

デリカシーのない恭子ちゃんの質問が続きます。

「彼女作んないの? なんかチャラチャラしてないで社会人らしく落ち着いたら?」

「彼女かあ。今忙しいし、クルマ買ったばっかで金ないしなあ・・・」

「えっ、ひらめくん。クルマ買ったの?」

(さやかちゃん、『ひらめ』に戻ってますよ・・・)

「うん。中古だけどね」

「今度、乗せてよ」

「納車したら連絡する。ケータイ教えて」

「うん」

そんなやり取りをしているとニヤニヤしている恭子ちゃんと目が合う。

「何?」

「そうやって自然にケータイ番号聞き出すのね」

(この娘は・・・)

お互いにモヤモヤする関係

そんなこんなで新宿に着き、喫煙所でタバコを吸っていると直ぐに奈央がやってきました。

「行こう」

「行くか」

二人で並んで歩いていて、飲み屋を探し入店。

「「お疲れ!」」

「そういえば、ひらめくん。最近、仕事頑張ってるらしいじゃん」

「相変わらずだよ。誰情報?」

「野田くん。さっき、『なんでひらめなんだ〜』って騒いでたよ」

野田は僕と同じ職場で、何かと僕にライバル心を燃やしてくるウザい男。

「ふ〜ん」

「やる気になった?」

「全然」

「少しはやる気になりたまえ。奈央は仕事ができる男が好きだぞ」

「バリバリ仕事したら、やらしてくれる?」

(睨むな・・・)

「なんで、こんな男がモテるのかね?」

「何が?」

「さやか、いるでしょ? なんか、ひらめくんのこと気に入っているらしいよ」

「薄々は気づいているよ。何もないけど・・・」

「本当? さっき恭子からメールきたんだけど」

本当にあの娘は口が軽いというか、空気を読まないというか、まあ僕と奈央がこんな関係だとは知るよしもないので・・・。ただの噂好きなんだろうけど・・・

「別にケータイ番号を交換しただけだよ」

「ふ〜ん。ドライブに行く約束したんでしょ?」

「奈央さんとも約束してんじゃん」

「そうだけどさ。奈央とさやかは違うじゃん?」

「何が違うの?」

なんか、厳しい言い方になってしまったんだけど、若い男女が二人きりで、それもみんなに内緒で飲んでいるのに何もないなんて、どう考えてもおかしい。

「ごめん・・・。同じだよ・・・」

(・・・泣くなよ・・・)

「ごめん。奈央さんとさやかちゃんは別。うん。別だよ。同じじゃない」

奈央さん、その大きな目で上目づかいは止めてください。そうじゃなくても惚れてしまいそうになっているのに、可愛いじゃないか・・・

「奈央さん。マジでごめん。エッチな気分になるとお互い困るでしょ? 可愛くならないで・・・」

「うん。そうね。襲われたら困る・・・」

「・・・」

「奈央だって悩んでるんだよ」

「何に?」

「たまには男の子に甘えたいじゃん? でも、ひらめくんに甘える訳にはいかないでしょ? 彼氏でもないし・・・」

「・・・付き合おうか」

「それはムリっ!」

(即答かいっ!)

「奈央はしばらくは彼氏はいらない。でも、ひらめくんが彼女を作るのに反対できる立場じゃないし、好きにして良いよ」

「う〜ん。なんか面倒くさくなりそうだから、この話は終わりっ! 飲も」

「直ぐに逃げるよね・・・」

「逃げてねーし」

「ねえ、今の奈央と彼女の奈央は何が違うの?」

「終わり」

長くなってきたので、以下の投稿に続きます。

友達、親友、恋人の違いは何なのか。肉体関係だけなのか? - 底辺からの視線

 

 

 

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった2

人間誰しも自分の奥底にある弱い部分を持っていて、その弱い部分を隠すために建前という表面上の顔を使い、必死に生きているのです。

その本当の自分というか、本音の部分を隠すのが大人であって、欲望と感情を丸出しにして生きていると「ガキだ」とか「早く大人になれ」と正され、しまいには人格まで否定され、生きることが苦しくなってしまいます。

なので、社会に求められるキャラとして生きるのが正義。

本当の自分に自信がないから、求められるキャラを演じる - 底辺からの視線

特に社会人になると人間関係には必ず、利害や損得が生まれ、騙し合いや駆け引きが生まれます。そんなクソみたいな人間関係に人生を消耗したくないと思い、鉄壁な建前の壁を作って生活をしていた僕は、感情的になり、自分の本音を話してしまいました。

以下の投稿の続きです。

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった - 底辺からの視線

僕を『いい人間』だと勘違いして、全てを晒してくる娘(仮に『奈央』とします)が苦手で本当の僕は弱くて汚くて卑しい人間だと教えるために「本当の自分」誰にも否定されたくない自分らしさの芯、価値観を話して、お互いに距離を取ることがベストだと伝えたつもりだったのですが、奈央は逆に距離をつめてきました。

他に隠していることはないよね?

「ひらめくん。他に隠していることはないよね?」

「そんな訳ないじゃん。隠しているものだらけだよ・・・」

「そりゃそうか・・・。じゃまずは、この前の質問に答えてよ。夢は何?」

以前、奈央に同じ質問をされたんだけど、そのときは誤魔化せたのに、今回は誤魔化せる気がしないので、正直に話す。

「絶対に笑わないでよ・・・。俺の夢は『好きな人間と好きなことを好きなだけする生活』を手に入れること。なんか、言葉にすると陳腐なんだけど・・・。お互いのエゴを認め合える人間とだけ生活をしたい・・・。小学生くらいのとき、公園の砂場で真剣に砂の山を作ってトンネルを掘って遊んだでしょ。時間も忘れて。あんな感じです仕事が出来れば幸せだと思わない? 砂山が崩れないようにどうするかを足りない頭で色々と考えて、砂を湿らせたり、砂の山を固めてみたり、本当にくだらないんだけど、みんなで同じ目標に向かって切磋琢磨して、同じ体験を通して苦労したり、喜んだり、些細なことで一喜一憂して、なんていうのかな、充実感というか、満足感というか、やった感? なんかそんなのを味わいたい・・・。まあ、ガキくさいよね・・・」

何か、バカみたいで子供のような夢だけど、頬杖をついてニコニコと真剣に奈央は聞いてくれました。なんか照れるので、サービス精神旺盛な僕は、つい余計なことを・・・。

「世界中の富と名声を手に入れ、可愛いお姉ちゃんと一日中、ダラダラと何も考えずに欲望と感情を丸出しにした生活も憧れるよね。いつも全裸で動物のように食いたい時に食べ、眠くなったら寝る。そしてエッチがしたいときにエッチをするみたいな・・・」

こんな話をするとこの娘は殺人者のような視線を向けてくるのです。この大きな目で睨まれると生きた心地がしません。

「嘘。冗談。分かっていると思うけど・・・」

「うん。この前は誤魔化していたけど、ちゃんと話してくれたね」

「奈央さんの夢は?」

「可愛いお嫁さん」

「旦那を尻にしくキッツイ嫁になる気がするわ」

(睨むな・・・)

「でもさ、会社にいたら、その夢は叶わないよね?」

「う〜ん。ムリだね〜、会社入る前に考えておけば良かったな〜」

「学生時代は何してたの?」

「女の尻ばかりを追いかけていたよ」

「・・・いや、冗談は良いから」

「割とマジで」

「・・・」

「なんというか、社会をなめてるんだろうね。きっと」

もう、なんていうか、奈央に何を話しても良い気がしていて「嫌うなら嫌ってくれて結構」なんて投げやりになり、カッコつける必要もなくなったというか、もう面倒くさくなってしまったというのが本心。

「例えば、みんなが大好きで尽くしたい相手の会社っていう組織があるじゃん」

「その言い方・・・特定の人間に対する悪意を感じるよ・・・」

「あんな弱っちぃ組織はなくて、俺は結構、舐めているんだ。給料貰いながら勉強させて貰えるとか、変な話、仕事しなくても会社にいれば給料が貰える・・・」

「でも働かないとダメじゃん」

「奈央さんの基準ではそうなのかも知れないけど、俺はやる気のあるバカほど迷惑だと思っているからあえて仕事をしない。能力がつくまでは、脇役、盛り上げ役の方が良いんだよ」

「絶対嫌われるよ」

「大丈夫だよ。結構『可愛い後輩ちゃん』キャラを確立しているし、俺には強い味方がいっぱいいるんだ」

「強い味方?」

「先輩女子社員だけには好かれるように細心の注意を払っているからね」

「上司じゃなくて?」

「上司なんてどう思われても良いんだよ。女子社員から嫌われなければ、仕事ができなくてもクビにはならんよ」

「どういうこと?」

「上司や先輩が俺を評価をするときに、感情で評価をすることはできなくて、第三者の意見を聞きたいと思うでしょ? そのときに多くの女子社員から評価が高い人間であれば無下にはできない。いくら気に入らなくてもね。まあ、直属の先輩や上司には『可愛い新人』だと思われるようにしているし、仕事はちゃんとしているから嫌われる要素がないけど、保険だね」

「本当に最低な男だね。計算高いというか、卑怯な手ばっかりじゃん・・・」

「ズルいけど弱者の生き方だよ」

「ひらめくんに正義はないのかね?」

ラクして稼ぐことが正義。ラクして経済的余裕を手に入れることで、時間的余裕も手に入るし、何よりも精神的余裕を手に入れられるじゃん。自分に余裕がないと周りの人に優しくなんかできなくて、世の中を良くするために、まずは僕が経済的余裕を手に入れる。まずはそこからだね」

「何か言っていることは分かるんだけど納得がいかないというか・・・。卑怯すぎる気がするんだよね。そんなこと奈央以外に話ちゃダメだよ」

「誰にも話さないよ。俺、すげー嫌な奴じゃん?」

「まあ、分かっているなら良いけど・・・。絶対、彼氏にはしたくない・・・」

「そんなことないよ。結構、女子が求めるキャラを演じる自信があるし」

「なんか、それが嫌なんだよ。騙されている感があって・・・」

「そんなことないよね。誰だって自分の都合の良いようにキャラを演じているじゃん。奈央さんだって酒が飲めないフリをしてんじゃん。一緒だよ」

「そうなんだけど・・・。奈央とひらめくんのは違うんだよ。絶対に違う!」

「奈央さんだって結構ズルいと思うよ。会社では出来る女のフリして、高い評価を貰おうとしてるじゃん? 本当は全然そんなことないのにさ。今の奈央さんなんて、可愛い女の子じゃん?」

「そんなことないでしょ?」

「奈央さん、気づいていないかもしれないけど、一人称が『奈央』になってるし、会社のときとは違って、トゲがなくなって、めちゃめちゃ可愛いよ・・・」

これは本心、別に口説こうとか好かれたいと思っていたわけではなく、段々とガードが弱くなってきた奈央に気づいてもらい、僕に警戒をしてもらいたかったからで、これ以上、奈央の素の部分を見るとお互いに離れられなくなりそうで怖かったのです。

「ありがと・・・」

(違う違う。それじゃ口説いているみたいじゃん・・・)

「やっぱり奈央の勘は間違っていなかったんだ・・・」

「どういうこと?」

「絶対、ひらめくんとは仲良くなれる気がしたんだ。この人は『ムリしてる』って感じて、奈央と一緒だと思った」

「騙されてるかもよ?」

「それはない。素直に話してくれてるじゃん。ただ思った以上にゲス野郎だったけど・・・」

僕の本心というか、本当の僕を晒して嫌われるどころが逆に認めてくれて、さらにいつもとは違う娘の素の部分を見せられて仲が良くならない訳はありません。

男女間の友情なんて綺麗事です。あるハズがない。 - 底辺からの視線

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった

僕は周りの人が思っているより『弱い人間』で自分の価値観を否定されたくありません。

そして、弱い自分を守るために会社での顔、家族の前での顔、友達の前での顔を使い分けています。その理由は他人から否定されても良い人格を演じることで、本当の自分、自分の本性をひた隠し、誰の目にも触れないようにして、誰からも否定されないようにするためです。

卑怯だと言われても、僕は自分の生き方、価値観を否定されたくはない。なので周りから求められるキャラを演じることで本当の自分を守っています。

そんな僕が嫌われても良いと「本当の僕」を見せてしまった娘(仮に『奈央』とします)に認められ仲良くなった話。

以下の投稿の続きです。

本当の自分に自信がないから、求められるキャラを演じる - 底辺からの視線

勘違いされたままで良い

新卒で就職をして3ヶ月くらい経つと同期の中で「俺はこれだけ会社に貢献しているぜっ!」みたいな自慢話が聞こえはじめ、さらに「俺も頑張らなくちゃ」という人間を増やし、僕のように「クビにならない程度に仕事をしよう」と考える人間からすると、そんなクソみたいな流行を作られるのは迷惑千万な話だし、そんなに価値観に僕を巻き込まないで欲しい。と思っていた頃、頻繁に同期の飲み会が開催されていました。

「これだけ頑張っているんだ」なんて自分で自慢をするのは、認めて欲しいのに認められない人間が『承認欲求』を満たすために騒いでいるような気がして引いてしまう。そんな冷めた僕がいました。

社会人としてやっていくことに不安を覚え、どうしようもなくなった話 - 底辺からの視線

なので、同期の飲み会、自慢大会ではいつも端っこで「早く結婚して寿退社をしたい女子」や「いつ会社を辞めてもおかしくない」と認識をされている落ちこぼれ予備軍と盛り上がることが常になっていました。一切、仕事の話なんてせず、くだらない話で盛り上がる集団。

別に同期に認められる必要はないし、そもそも飲み会とは親睦を深める場であって自慢話や愚痴なんて聞きたくもありません。

別に僕もやる気がないわけでもないし、クビにならない程度には仕事をしてるし、ただ会社に依存して生きたくないと内心くすぶっているいるだけ。だけど、やる気を出せと言われて「はいそうですね」とも答えたくもないし、否定するのも面倒くさい。

そんな態度なので、勘違いをされるけど問題ありません。だって同期に認められる必要なんてこれっぽっちもなくて、逆に仕事ができる人間だと思われ、嫉妬され、恨まれるくらいなら勘違いを続けていて欲しい。

と思っているから本当のことは誰にも言いません。本心は隠すモノ。それが弱い人間が、社会人として生きるための知恵。

楽しく解散、そして・・・

同期の自慢話を嫌と言うほど聞かされながらも、健気に女子たちと愛を語り、仕事の話をしたくない人間とバカ話をして楽しむことが同期の飲み会の目的。僕が何をしているか、何をしたかなんていうのはどうでも良い。僕は他人の自慢話を聞くのが苦痛なので、僕が自慢話をしたら周りに迷惑をかけると思っている。聞かれれば答えるけど、こっちから押し付けるものではありません。

そして、そんな仕事とプライベートを混同しない賢い僕たちは、いつの間にか二次会にも参加しないで帰る集団。最初はみんな嫌々付き合っていたんだけど、僕が帰ると言い出したら、多くの仲間が帰る選択肢を選びはじめました。いつもの顔ぶれで駅まで向かい、方向が同じメンバーでバカ話の続きを楽しみながら電車に乗り、流れで解散していく・・・。

ただその日は、いつもは二次会参加メンバーであり、さらにいうと家も反対方向なハズの苦手な奈央も一緒でした。奈央は僕の可愛い子猫ちゃんたちとも仲が良く、和気あいあいと話をしていました。小心者の僕は、苦手な奈央がいるだけで会話に参加できずに聞き耳を立てていました。

「奈央、珍しくない? 今日はどうしたの?」

「ちょっと用事があって新宿にね」

なんて奈央の話を聞きながら「色々あるよね。社会人だもん」なんて一人で納得していると空気を読まない女子(仮に『恭子』とします)が余計な一言をぶちかましました。

「ねえ、ひらめくん。奈央と話したことある? なんか、二人が話しているのってみたことない気がするんだけど?」

「そう?」

「なんか、ひらめくんらしくないというか、奈央によそよそしいんだよな。怪しい関係だったりして・・・」

本心なのか、冗談なのか・・・。そんなツッコミを入れられると周りの噂好きの女子たちも寄ってたかって、やんや言ってきます。ちょっと前に奈央とは偶然、サシ飲みをしてちょっとだけ意識していたのは事実ですが、会社では話す機会がなかっただけで避けているわけではありません。いや、避けていました・・・。何か苦手意識があるというか・・・

奈央の方に目線を向けると、何か言いたそうに睨んできました。「余計なことを喋るなよ」と大きな目が訴えている気がして困っていると奈央から助け舟が・・・

「そんな訳ないじゃん? 私にも選ぶ権利があるよ・・・」

超笑顔で、僕の胸にグサッと刺さる一言を平然と言ってのける。そして、その一言を信じてしまう女子たちの態度も気に入りません・・・。

「確かに・・・」「そりゃそうだよね・・・」「奈央にも選ぶ権利があるわ・・・」なんて勝手に納得をする女子たち・・・。

僕は、車窓から流れ行く都会の光をひとり寂しく眺めるのでした・・・。

乗り換えのため、新宿で電車を降り他路線に乗り換える女子たちと再会を約束して、ひとり寂しく埼京線のホームに向かっているといきなり、腕を掴まれました・・・。

拉致られる男・・・

僕は金髪パーマでだらしなくネクタイを緩め、猫背で歩いていたので、虫も殺さない平和主義者なのに荒くれ者たちによく勘違いをされていました。「おう。にいちゃん」なんて野太い声で威嚇されるなんて日常茶飯事・・・。

(面倒くさいな・・・)

なんて思いながら振り返ると、身長2m体重100kg超えの戦闘員。がいれば、まだ良かったのですが、そこにいたのは、大きな目で僕を睨む奈央・・・。

「なんだ。奈央さんか・・・。どうした? 迷子?」

「ごめん。びっくりした? えっ何? ごめん・・・。ひらめくんだよね?」

「うん。どうしたの?」

「飲み行こう」

「今から? 誰か呼ぶ? 恭子ちゃんならまだ駅にいるかも・・・」

なんとなく、二人きりになるのが嫌で誰かを呼びたかったのですが速攻で却下されました。

「誰か来たら飲めないじゃん・・・」

この面倒くさい娘は会社では「酒が飲めないフリ」をしていて、頑なに会社の飲み会では、飲んでいませんでした。ただ僕は偶然、飲むことを知ってしまい「会社のメンバーにバラしたら殺す」と脅されていました。

「というか、用事があったんじゃないの?」

「うん。『ひらめくんと飲む』という用事ね」

「意味が分からん」

「いいじゃん。行こうよ」

なんか面倒くさいんだけど、女子に誘われて行かないという選択肢はないような気がして、さらにいうと断るということは苦手なこの娘に負けたことになる気がして付き合うことにしました。

2度目のショットバー

なんとなく、前回の三次会、初めて二人でサシ飲みをしたショットバーに。バーテンダーのおじさんも覚えてくれていたみたいで軽く会釈をしてくれ、無言でカウンターの端っこの席をすすめてくれました。

「どうした? 相談? 金以外なら何でも相談に乗るよ」

「ひらめくんに相談する程、落ちぶれてないよ」

(さっきもそうだけど、僕の胸にチクッと痛い言葉を平気で言わないでくださいよ・・・)

「なんか、みんな本心で話さなくて疲れるよね」

「まあ大人だからね。しょうがないんじゃない?」

「ひらめくんだけだよ。本音で話してくれるの・・・」

(待て待て。僕の本性なんて見せてないし、見せる気もない・・・)

「奈央さん。俺なんて信用しちゃダメだよ。本当は腹黒くて汚くて頭の中はエッチなことしか考えてなくて、今からでも奈央さんにあんなことやこんなことをしようと思っているかもしれないよ」

「ホテル行く?」

「えっ?!」

(なになに、やっぱり東京の女は大胆で、これは僕を誘っているのか? えっ何? 一緒にホテルに行くと睡眠薬を飲まされちゃって、朝、財布がなくなっているパターン? それもやった記憶もないのに「子供ができた・・・」なんて言われちゃったりして・・・)

自分から言っておきながら何ですが、拒否されるのが前提の軽口に対して、女子からホテルに行くなんて誘われると焦る・・・。焦りまくる・・・。

「嘘」

(嘘ね。良かったよ・・・。良かったのか? 残念じゃねーかっ!)

「ひらめくんはチャラチャラしているけど同期の中でイチバン大人だよ。しっかりと自分を持っているし・・・」

(・・・なんか勘違いされてんだよな・・・)

「ごめん。奈央さん。俺を褒めても何も出ないし、夢もないつまらない男なんだよ。勘違いしないで欲しい」

僕は誰からも認められたいと思っていなくて、変な話こうやって二人で飲んでいるけど、別に奈央さんと仲良くなりたいとか、奈央さんに認めてもらいたいなんて気持ちはないこと。もちろん、女子としての魅力は感じていて身体を許してくれるなら喜んでエッチをする。だけど、僕は奈央さんが苦手で出来れば絡んでほしくないことを素直に伝えました。

「そうなんだ・・・。なんか避けられている気はしたけど・・・。ごめんね・・・。私の勘違いだったみたい・・・。うん、ありがと。本当のことを言ってくれて。凹んだけど・・・。ひらめくん、本当にごめん・・・」

(・・・待て待て。泣くなっ! 俺が悪者になってしまう・・・)

「なんかごめん。俺、クソみないな人間だから・・・。なんかオブラートに包んで話すことができなくて・・・」

「うん。本当に最低の男だよね。こんな仕打ちをされたのは初めてだよ・・・」

「そりゃそうだよね・・・なんか感情的になってごめん・・・」

なんか罪悪感があり、帰るとも言えず・・・。しばらく、お互い無言で、ただただ空いたグラスを見つめていました。

「うん。ありがと。最後に私のことが苦手な理由を教えて」

奈央が吹っ切れたように大きな目で、僕のことをみてきました。僕はこの真っ直ぐな視線が苦手でした。奈央をこれ以上傷つけないように言葉を考えながら伝えました。

「奈央さんが俺を疑ってないことに耐えられないんだ」

僕は誰とでも深い関係になりたいとは思っていなくて、出来れば表面上の付き合いだけで誤魔化して生活をしたい。それは、お互いに利害関係が生まれ、それが原因でお互いに半信半疑になり、駆け引きをするのが面倒くさいから。なのに、奈央さんは自分の隠したい部分を僕に晒してくるから、僕も隠していることを晒さないといけない気分になってしまい、本当の自分を晒すのが怖い僕は苦手だと感じてしまう・・・。

僕は素直な奈央さんと違って、根性がひん曲がっていて本性というか「本当の僕」は誰にも見せたくない。僕の本性を見せたら嫌われて当然。そしてそんな僕の本音の部分を否定されて凹むなんて経験をしたくはない。

「うん。本当のことを話してくれてありがとう。ひらめくんが本当に最低な男だということは分かったよ」

「まあ、そうだよね・・・。お互いに近づかない方がwin-winなんだよ・・・」

「それとこれは別。その根性を叩き直してやる」

「えっ!?」

(意味が分かりません・・・)

「良いじゃん。本当のひらめくんが、弱くて汚くてスケベでも。誰にも認めてもらえないかもしれないけど私だけは認める。今、ひらめくんが言ったことに嘘がないならね!」

「何それ? 告白?」

「そんなわけないでしょ?」

「嘘はついてないんだけど、僕が奈央さんのことが苦手なのは変わらなくて・・・」

「大丈夫。奈央は素直な女の子だから直ぐに慣れるって。惚れるなよ!」

訳がわからなかったけど、奈央には奈央なりの理屈があって、僕に絡むことに決めたみたいで、僕は僕で、この日は奈央を泣かしてしまったり、誰にも話さずひっとりと思っていたこと言葉にして伝えたり、面倒くさくなりどうでもよくなってしまいました。

ちょっと長くなってきたので別の投稿に続きます。

苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった2 - 底辺からの視線