底辺からの視線

中年親父目線で気づいたことを雑記的に書き殴るブログ

約20年前にある娘と会って今の自分がいる2

人生を変える人間との出会いというのは誰にでもあるもので、リアルな世界では恥ずかしくて誰にも話せません。

僕の人生を大きく変えたのは同期の女子でした。そんな娘との出会い。以下の投稿の続きです。

約20年前にある娘と会って今の自分がいる - 底辺からの視線

僕はひねくれ者なので、素直というか、他人を疑うことを知らないというか、他人に対して真っ直ぐな人間が苦手です。

困ったことに、そんな苦手な娘(仮に『奈央』とします)と二人きりにされてしまいました。

ビビりまくり、緊張しまくり

普通に考えれば、女子と二人きりなんてチャンスでしかなく、僕もこの娘じゃなければテンション高め、下心丸出しで誘っていたと思います。

だけど僕のビビりカウンターが危険を伝えてくるのです。

こいつとは仲良くなれない・・・

理由なんてなく、ただの勘です。だけど僕の勘は当たる。奈央には悪いけど、苦手な人と一緒にいる時間ほどムダはな時間はありません。さらに言うと僕が苦手ということは、相手も僕のことが苦手なハズでお互いに関わらない方が良い付き合いなのです。

この緊張感から解放されたい。

「お疲れ。とりあえず駅まで送るよ・・・」

「うん」

普段はテンション高め、気合マシマシで女子とは話すのですが、二人きりになると何を話して良いのか分からないウブな僕がいました。

だけど、弱い自分をさらけ出すなんていうアホなことはしません。テンションを上げ、必死に場を繋ぎます。なのに、なかなか乗ってこない。なんか、ひとりで焦ってペラペラとしゃべり、虚しい気持ちが湧いてきました。

(ああ、面倒くさい・・・)

盛り上げることを諦め、黙々と二人で駅に向かう選択をしました。もう、どうでも良いなんて不貞腐れてポケットに手を突っ込み、タバコに火をつけ、咥えタバコ。

歩きながら、奈央を観察すると、悲しい気持ちになってしまいました。

堂々と歩く奈央と猫背でポケットに手を突っ込み、タバコを咥えながら歩く僕、ビシッとスーツを身にまとい一分の隙さえない奈央と隙だらけで襲われたら直ぐに絶命してしまいそうな僕、明るい道を歩く奈央とコソコソと日陰を歩くと僕。どう考えても不釣り合いな二人。さらにいうと、なんとなく不機嫌そうな奈央と酔っ払いの僕。完敗です

「ねえ、飲み直さない?」

足早に駅に向かう途中、あり得ない提案を受け、テンパる小心者がいました。だけど、そんなカッコ悪い自分を誤魔化すために精一杯努力します。

「ホテル行く?」

目の前のラブホテルの明かりを指差し奈央と目を合わせる。

(怖いから睨まんでくれ・・・)

「嘘、冗談。本心ではない・・・。すまん・・・。ごめんなさい」

「どっか良いお店ない?」

任せてください。学生時代から飲み歩いていたので、女子受けする店から、枯れた親父が集う店までレパートリーは豊富です。

というか、男を誘うテンションではないよね? 学生時代だったら、間違いなく「嫌だね、じゃあねっ!」なんて勿体ないけど叫んで帰るんだけど、先輩の顔もあるし、何よりも社会人としてそんな態度は子供っぽ過ぎる。なんか面倒くさいけど、付き合うことに。

とは言っても、小さい男です。相手が飲まないと知っていながら、飲まずにはいられない店に連れて行き、早々に切り上げるつもり・・・。

「行き慣れた店で良い?」

「任せる」

ということで、カウンターのみ、ママとチーママ、そして、酔っ払いの常連親父たち、アットホームな居酒屋へ電話して行く旨を伝える。

はっきり言ってホームです。ホームグランド。僕のことを知らない人がいない小さな飲み屋。女子客なんて見たことがないチンケな小料理屋。暖簾をくぐれば、こっちのもの。

知り合いばかりで、奈央さんと話す必要もありません。勝手に飲んでママ、チーママと盛り上がり、居心地の悪くなった娘は僕を置いて帰るハズ・・・。そんな計算。

痛恨の計算ミス

店に入るなり、目を輝かせる奈央・・・。

「おう、ひらめ! 久しぶりだな? なんだサラリーマンか?」

僕の服装を見るなり、常連の親父が声をかけてくる。ママもチーママも笑顔で迎えてくれます。神・・・。

「就職、おめでとう!」

「うん。ありがとう。ビールで」

チーママから瓶ビールを受け取り2つのコップに注ぐ。

「相変わらず、手が早いな? 新しい彼女か?」

常連の親父たちは奈央に興味深々。

「会社の同僚? 別に仲良くないし」

「奈央です。よろしくお願いします」

奈央は嫌な顔をせず、常連の酔っ払いに笑顔を振りまく。意外・・・。

なんか悪いことをしている気になりながら、ビールを注いだコップを奈央に渡しました。

とりあえず僕たちの就職祝いということで乾杯。

(飲むじゃん・・・)

酒は飲まないと言っていたくせに、グイグイ注がれるがままに飲む・・・。寂れた居酒屋で若い女子に飢えた親父たちのハイテンションに合わせ、テンション高めで、めっちゃ楽しそうに飲む。

(知らないからな。東京は怖いところだからな・・・)

小1時間程、ママとチーママに近況報告を済ませ「帰ろうか」と提案するもスケベな親父たちと盛り上がる奈央は席を立とうとはしません。予定より長居をしてしまいました。

「帰ろう」

後ろ髪を引かれる奈央を無理矢理立たせ、店を出ました。もう十分だろ・・・。

店を出て歩き出し、疑問に思っていたことを聞いてみました。

「飲めんじゃん・・・」

「私、『飲めない』なんて言った? 『飲まない』とは言ったけど」

なんて笑顔で振り返る奈央の仕草に身体の中心がゾクゾクしました・・・。はちゃめちゃ可愛い・・・。

「なんか良かったよ。もっとオシャレな店に連れて行かれたら、帰ろうと思ってた」

(えっ、そっち?)

人生は選択の連続で間違った選択をしてしまうときがあります。早く帰るためにはオシャレで女子受けする店を選択するべきでした。

「楽しんでくれて良かったよ」

作戦は失敗したんだけど、この娘の意外な一面が見れて、ちょっとだけ得した気分になりました。

ここまでは・・・。

もう一軒、追加される

タバコを咥えながら駅まで歩く途中、意外な提案が・・・。

「ちょっと話がしたいんだけど・・・」

(告白か? 東京の女は積極的だって言うし「SEXしよ」なんてトレンディドラマの女子のように逆告白もあるよな・・・)

「もう一軒、付き合ってよ」

「お、おう」

下心全開です。もしかしたら間違いがあるかも知れません。社会人になってもワンナイトラブなんて全然あるじゃん? 男なら誰でも期待をするシチュエーション。苦手な女子だろうが関係ありません。本能の赴くままお互いの肉体を求めあえば良いのです。男女間に言葉はいりません。

期待に心を躍らせ、奈央の後についていくと連れて行かれたのは重厚な扉のショットバー

奈央が学生時代のサークルの先輩と何度か来たことがあるお店らしく、カウンター内の渋いバーテンダーさんとも知り合いのようでした。

先程のお店とはテンションが違い、なんとなくネクタイを締め直す小心者の僕。カウンターに並んで座り、奈央とバーテンダーさんとの昔話に耳を傾けながらも、店の中をキョロキョロと確認。

これは僕の癖で、自分がどこにいるのか、どこに何があるのか、危険はないかを確認するまでは落ち着けません。危機管理というか、初めて訪れる場所では必ず行ってしまう習性。

「ひらめくん、ちょっと良い?」

「うん。何?」

夢は何だね?

「へ?」

凄く間抜けな顔をしていたと思います。不意を突かれた。想像もしていなかった質問。だけど焦っているところは見せられません。

「世界征服?」

「真面目な話。何がしたい?」

「奈央さんとエッチなこと」

(ごめんなさい・・・。睨まないでもらって良いですか? マジで怖いんだけど・・・)

「夢は何だね? 真剣に考えて」

と言い残し、真緒はトイレに。

無理じゃん。夢なんてないよ。追いかける夢がないから、平々凡々の生活を送り、そこそこの幸せを手に入れるために、サラリーマンになったわけだし、世間のサラリーマンのほとんどが夢も希望も抱かず、ただ淡々と仕事をして些細なことで一喜一憂しているのです。

それも新卒のバカには答えなんてあるわけない。目の前のことで精一杯で将来のことなんて考える余裕もない・・・。

自分の理想、夢がなければ希望もない。今の生活から脱出する唯一の方法 - 底辺からの視線

40歳を超えた今だから分かる

当時は面倒くさい奴だと思っていたけど、40歳を超えて息子たちを育てていると夢を持つ必要性というか、人生の目標を持つ大切さを感じます。僕は、このときの奈央に言われた言葉が忘れられず、いまだに何か悩むことや選択を迫られたときは思い出すようにしています。

夢は何だね?

もう連絡も取れないんだけど、僕にとっては人生の師匠であり、僕が変わるきっかけになった大切なヒト。

ただなんとなく生きることも悪くはないし、そんな生き方を否定するわけではありません。だけど、僕は、誰かのエゴのために行きたくはありません。死ぬ間際に「楽しかったな」と思える生き方をしたい。

間違った選択をしてしまうときもあるけど、それも僕の責任だし、他人任せで安定した人生なんて面白くないと思うし、失敗をしても自分で選択した人生を歩みたい。

そして、この投稿を読んだあなたにとって、僕が奈央の代わりになれれば最高です。

あなたの夢はなんだね?

くだらない僕の成長物語ですが、続きに興味を持って頂けたら、以下の投稿へ続きます。

本当の自分に自信がないから、求められるキャラを演じる - 底辺からの視線