人間誰しも自分の奥底にある弱い部分を持っていて、その弱い部分を隠すために建前という表面上の顔を使い、必死に生きているのです。
その本当の自分というか、本音の部分を隠すのが大人であって、欲望と感情を丸出しにして生きていると「ガキだ」とか「早く大人になれ」と正され、しまいには人格まで否定され、生きることが苦しくなってしまいます。
なので、社会に求められるキャラとして生きるのが正義。
本当の自分に自信がないから、求められるキャラを演じる - 底辺からの視線
特に社会人になると人間関係には必ず、利害や損得が生まれ、騙し合いや駆け引きが生まれます。そんなクソみたいな人間関係に人生を消耗したくないと思い、鉄壁な建前の壁を作って生活をしていた僕は、感情的になり、自分の本音を話してしまいました。
以下の投稿の続きです。
苦手な女子だけが「本当の僕」を認めてくれた。だから仲良くなった - 底辺からの視線
僕を『いい人間』だと勘違いして、全てを晒してくる娘(仮に『奈央』とします)が苦手で本当の僕は弱くて汚くて卑しい人間だと教えるために「本当の自分」誰にも否定されたくない自分らしさの芯、価値観を話して、お互いに距離を取ることがベストだと伝えたつもりだったのですが、奈央は逆に距離をつめてきました。
他に隠していることはないよね?
「ひらめくん。他に隠していることはないよね?」
「そんな訳ないじゃん。隠しているものだらけだよ・・・」
「そりゃそうか・・・。じゃまずは、この前の質問に答えてよ。夢は何?」
以前、奈央に同じ質問をされたんだけど、そのときは誤魔化せたのに、今回は誤魔化せる気がしないので、正直に話す。
「絶対に笑わないでよ・・・。俺の夢は『好きな人間と好きなことを好きなだけする生活』を手に入れること。なんか、言葉にすると陳腐なんだけど・・・。お互いのエゴを認め合える人間とだけ生活をしたい・・・。小学生くらいのとき、公園の砂場で真剣に砂の山を作ってトンネルを掘って遊んだでしょ。時間も忘れて。あんな感じです仕事が出来れば幸せだと思わない? 砂山が崩れないようにどうするかを足りない頭で色々と考えて、砂を湿らせたり、砂の山を固めてみたり、本当にくだらないんだけど、みんなで同じ目標に向かって切磋琢磨して、同じ体験を通して苦労したり、喜んだり、些細なことで一喜一憂して、なんていうのかな、充実感というか、満足感というか、やった感? なんかそんなのを味わいたい・・・。まあ、ガキくさいよね・・・」
何か、バカみたいで子供のような夢だけど、頬杖をついてニコニコと真剣に奈央は聞いてくれました。なんか照れるので、サービス精神旺盛な僕は、つい余計なことを・・・。
「世界中の富と名声を手に入れ、可愛いお姉ちゃんと一日中、ダラダラと何も考えずに欲望と感情を丸出しにした生活も憧れるよね。いつも全裸で動物のように食いたい時に食べ、眠くなったら寝る。そしてエッチがしたいときにエッチをするみたいな・・・」
こんな話をするとこの娘は殺人者のような視線を向けてくるのです。この大きな目で睨まれると生きた心地がしません。
「嘘。冗談。分かっていると思うけど・・・」
「うん。この前は誤魔化していたけど、ちゃんと話してくれたね」
「奈央さんの夢は?」
「可愛いお嫁さん」
「旦那を尻にしくキッツイ嫁になる気がするわ」
(睨むな・・・)
「でもさ、会社にいたら、その夢は叶わないよね?」
「う〜ん。ムリだね〜、会社入る前に考えておけば良かったな〜」
「学生時代は何してたの?」
「女の尻ばかりを追いかけていたよ」
「・・・いや、冗談は良いから」
「割とマジで」
「・・・」
「なんというか、社会をなめてるんだろうね。きっと」
もう、なんていうか、奈央に何を話しても良い気がしていて「嫌うなら嫌ってくれて結構」なんて投げやりになり、カッコつける必要もなくなったというか、もう面倒くさくなってしまったというのが本心。
「例えば、みんなが大好きで尽くしたい相手の会社っていう組織があるじゃん」
「その言い方・・・特定の人間に対する悪意を感じるよ・・・」
「あんな弱っちぃ組織はなくて、俺は結構、舐めているんだ。給料貰いながら勉強させて貰えるとか、変な話、仕事しなくても会社にいれば給料が貰える・・・」
「でも働かないとダメじゃん」
「奈央さんの基準ではそうなのかも知れないけど、俺はやる気のあるバカほど迷惑だと思っているからあえて仕事をしない。能力がつくまでは、脇役、盛り上げ役の方が良いんだよ」
「絶対嫌われるよ」
「大丈夫だよ。結構『可愛い後輩ちゃん』キャラを確立しているし、俺には強い味方がいっぱいいるんだ」
「強い味方?」
「先輩女子社員だけには好かれるように細心の注意を払っているからね」
「上司じゃなくて?」
「上司なんてどう思われても良いんだよ。女子社員から嫌われなければ、仕事ができなくてもクビにはならんよ」
「どういうこと?」
「上司や先輩が俺を評価をするときに、感情で評価をすることはできなくて、第三者の意見を聞きたいと思うでしょ? そのときに多くの女子社員から評価が高い人間であれば無下にはできない。いくら気に入らなくてもね。まあ、直属の先輩や上司には『可愛い新人』だと思われるようにしているし、仕事はちゃんとしているから嫌われる要素がないけど、保険だね」
「本当に最低な男だね。計算高いというか、卑怯な手ばっかりじゃん・・・」
「ズルいけど弱者の生き方だよ」
「ひらめくんに正義はないのかね?」
「ラクして稼ぐことが正義。ラクして経済的余裕を手に入れることで、時間的余裕も手に入るし、何よりも精神的余裕を手に入れられるじゃん。自分に余裕がないと周りの人に優しくなんかできなくて、世の中を良くするために、まずは僕が経済的余裕を手に入れる。まずはそこからだね」
「何か言っていることは分かるんだけど納得がいかないというか・・・。卑怯すぎる気がするんだよね。そんなこと奈央以外に話ちゃダメだよ」
「誰にも話さないよ。俺、すげー嫌な奴じゃん?」
「まあ、分かっているなら良いけど・・・。絶対、彼氏にはしたくない・・・」
「そんなことないよ。結構、女子が求めるキャラを演じる自信があるし」
「なんか、それが嫌なんだよ。騙されている感があって・・・」
「そんなことないよね。誰だって自分の都合の良いようにキャラを演じているじゃん。奈央さんだって酒が飲めないフリをしてんじゃん。一緒だよ」
「そうなんだけど・・・。奈央とひらめくんのは違うんだよ。絶対に違う!」
「奈央さんだって結構ズルいと思うよ。会社では出来る女のフリして、高い評価を貰おうとしてるじゃん? 本当は全然そんなことないのにさ。今の奈央さんなんて、可愛い女の子じゃん?」
「そんなことないでしょ?」
「奈央さん、気づいていないかもしれないけど、一人称が『奈央』になってるし、会社のときとは違って、トゲがなくなって、めちゃめちゃ可愛いよ・・・」
これは本心、別に口説こうとか好かれたいと思っていたわけではなく、段々とガードが弱くなってきた奈央に気づいてもらい、僕に警戒をしてもらいたかったからで、これ以上、奈央の素の部分を見るとお互いに離れられなくなりそうで怖かったのです。
「ありがと・・・」
(違う違う。それじゃ口説いているみたいじゃん・・・)
「やっぱり奈央の勘は間違っていなかったんだ・・・」
「どういうこと?」
「絶対、ひらめくんとは仲良くなれる気がしたんだ。この人は『ムリしてる』って感じて、奈央と一緒だと思った」
「騙されてるかもよ?」
「それはない。素直に話してくれてるじゃん。ただ思った以上にゲス野郎だったけど・・・」
僕の本心というか、本当の僕を晒して嫌われるどころが逆に認めてくれて、さらにいつもとは違う娘の素の部分を見せられて仲が良くならない訳はありません。
男女間の友情なんて綺麗事です。あるハズがない。 - 底辺からの視線