底辺からの視線

中年親父目線で気づいたことを雑記的に書き殴るブログ

仕事ができる人間のポジションに最速でつく方法

こんな話をすると元も子もないんだけど、人生は運次第でコツコツと地味な努力を続けていても人生が好転する確率は高くありません。

例えば会社で「主要なポジションにつく」というチャンスはそこかしこに転がっていて、そのチャンスを掴むかは運次第なのです。誰もが断り続けたビッグチャンスが僕の目の前に差し出され、全力で拒否をしたのですが押し付けられ、いつの間にか、仕事ができる人間というレッテルを貼られ、忙しくなってしまった話です。

僕は自分では望んでおらず、できれば仕事ができない『お荷物社員』として一生を過ごせれば良いと思っていたのですが、理不尽な理由で仕事を押し付けられ、いつの間にか、本人は望んでいないのに仕事ができる人間としてのポジションを手に入れてしまいました。

誰もが逃げるビッグプロジェクト

絶対に慣れないと思っていた社会人としての生活にも慣れ始めた夏頃、職場で不穏な空気が流れていました。というのも、仕事ができる先輩が急に長期療養に入ることになり、その先輩が進めていたビッグプロジェクトを誰が引き継ぐかという話が持ち上がってきました。

当時の僕は新人で、さらにいうと「仕事をしない人間」という嬉しい免罪符を頂いていたので、どこ吹く風で戦況を眺めていました。年功序列で、先輩たちにお声が掛かっていたので新人の僕は絶対に回ってこないとタカを括っていて、さらにいうと、同期の野田は「早く仕事ができるようになりたい」とか「仕事を任せてくださいよ〜」なんて上司に公言をしていたので、僕たち新人まで仕事が落ちてきても、僕の出番はないと思っていたのです。

ですが、流石の野田もビッグプロジェクト過ぎて尻込みをして「他の案件が・・・」なんて逃げやがり、特に担当プロジェクトがなく、先輩の仕事を手伝っていた僕にお声がかかりました。僕は職場で一番、手が空いていたのですが「やりたくない」とか「できるイメージが湧かない」なんて大騒ぎをして断りました。

ちょうど10時の休憩に先輩女子社員たちとコーヒーブレイクをしていたら、僕の教育係の先輩(仮に『石田さん』とします)がやってきて

「ひらめ。会議で呼ばれてるから来いよ」

なんていわれ、先輩女子社員たちに「ひらめくん、クビ宣告だね」とか「子供みたいに駄々をこねるから」なんて深刻な顔で送り出されました。

(・・・あの断り方は大人気なかったかな)

ちょっと反省をしながら石田さんと会議室に入るとお偉いさんが勢揃い

(怖えー・・・)

「早速なんだけど、あのプロジェクトをやる人がいないんだ。どうしてもやれないか?」

「先輩方が出来ないって言ってるのに、僕が出来ると思いますか?」

この一言で、場の空気を凍らせました。空気が読めない人間とはこういうモノです。

「会社として全面バックアップをする。社内業務、他部署との調整。メンバーへの指示は石田を含め、部課長で行う」

「つまり、何をすれば良いのですか?」

「プロジェクトリーダーとして、お客様の前に出れば良い。もちろん一人ではなく営業も同行してもらう」

「ちょっと質問して良いですか? お飾りでリーダーを務め、実質的には何もしなくて良いという話で間違いないでしょうか?」

「・・・そうだね。言い方は悪いけど、つまるところ、そういうことだね」

「良いっすよ。なんだ、みんな逃げるから、大変なのかと思ってた。大丈夫っす。やります」

後から石田さんに聞いた話だと、本来は社内調整、お客様との打合せ、メンバーへの指示をしてプロジェクトを進めるのがリーダーとしての仕事なんだけど、僕が出来る訳がないので、会社一丸となって手分けをして僕を助けようと考えてくれたみたいです。

順調な進捗のプロジェクト

自分でいうのも何ですが、僕は変な才能というか、実はプロジェクトリーダーになるために生まれてきたんじゃないかと勘違いをする位、順調にプロジェクトを進めることができました。

数十人のメンバーが機嫌よく働けるように、みんながやりたがらない雑用をこなしつつ、メンバーの話を聞き、あちこちに調整をかけるのが僕の与えられたポジションで完璧にこなしていました。さらに、周りが『ひらめだから』と優しい目でみてくれたので問題があるハズありません。

さらにいうと、システム開発の納期が遅れるのは決まっていない仕様があるからで、尻の軽い僕はお客様の元にすっ飛んで行き、お客様と一緒にどうすれば効率が良いかを考え、仕様を決めてくるのでほぼ工程通り、若干前倒しで進んでいました。

実際には何もしておらず、あちこちに行って雑用とお喋りをしていた感じなのですが、唯一の仕事、進捗報告時に周りが不思議がるほど、順調でした。

そんな忙しい? 合間を縫ってちゃんと飲みには行きます。

他人に褒められるのも悪くない

その娘(仮に『奈央』とします)は社会人になって数少ない飲み仲間で毎週のように飲むようになっていました。

「なんか、ひらめ、仕事頑張っているらしいね。お姉さんは嬉しいよ」

「・・・奈央さん、僕の方が年上だし、奈央さんが喜ぶ理由もない」

「あんなに仕事したくないと言っていたひらめがバリバリ仕事をしているのが嬉しくてさ」

「今でも、仕事なんてしたくないよ・・・」

「それは本心かね?」

「本心だよ。仕事をしてるからって給料が上がる訳でもないし、忙しくて遊びにも行けないし、周りはみんな年上で気を使わなければいけないし、できることなら『会社のお荷物』に戻りたい・・・」

「順調?」

「うん。全社あげてバックアップしてくれてるからね。これで失敗したら俺のせいじゃないよ」

「そっか。良かったじゃん。お姉さんだけがひらめを信じていたんだよ。やればできる子だと思っていたんだ・・・。今日は嬉しくてしょうがない。うんうん」

(ひとりで納得しているよ・・・)

「仕事の話は終わりっ! お酒が不味くなる」

「せっかく奈央が褒めてあげてるのに」

「ありがとう。でもさ、大きな仕事も、小さな仕事も関係ないじゃん? 俺は今までだって会社から求められることはやってた訳だし・・・。今回はたまたま求められたのが『お飾りリーダー』だっただけで、言われたことを粛々とこなしてるだけなんだよね」

「何? お飾りリーダーって?」

「あれ? 言ってなかったっけ? リーダーとは名ばかりで雑用係なんだよ」

僕はコトの成り行きを奈央に説明しました。

「奈央が聞いてる話と違う・・・。誰もやりたがらない仕事をひらめが、嫌々ながら、周りの猛者たちに揉まれ、獅子奮迅の働きをしている。このままでは精神的に潰れてしまうかも・・・。って聞いたんだけど・・・」

「すげ〜な。噂って・・・。実態は、今までは石田さん専属の雑用係だったのが、数十人の雑用係になっただけで、やってることは変わらない。確かに、仕事が出来る先輩たちが心地よく働けるように、できる限りの雑用を引き受けて忙しくしているけど・・・。精神的に追い込まれることなんてないよ。みんな可愛がってくれてるしね。どこで尾ひれがついてんだろ?」

「なんか心配して損した気分だよ・・・」

「えっ? 奈央さん、心配してくれてたの?」

「するでしょ? 普通・・・。凹んでいるなら慰めてあげようと思ってたのに・・・」

「あっ、うそ。めちゃくちゃ凹んでる・・・。優しいお姉さんに慰めてもらいたい。ねっ」

「『ねっ』じゃないし・・・。やっぱり、ひらめはひらめだったか・・・」

「俺は変わらんよ・・・」

「そうね。そう言えば来週の同期会なんだけど、とうとう離脱者が出たらしいよ」

「どういうこと?」

「総務の娘が今月いっぱいで辞めるらしい・・・」

「仁美ちゃん? なんか心配してたんだよね・・・。電話してても元気がないというか・・・」

「えっ? 連絡取ってるの?」

「この間、電話貰ったんだよ。何の話をしたっけな?」

「同期とそんなに連絡取ってるの?」

「仲の良い娘たちからは、たまに電話ある。話するだけ、何もない」

「なんか、隠してる?」

(睨まないでください・・・)

「仁美ちゃんとは何もない。ほんと、電話で話しただけだよ」

「他の娘は?」

「恭子ちゃんは『合コンしてよ』って言われたけど実現してないし、さやかちゃんはドライブに連れてったでしょ? あと、マナからは・・・」

奈央の目線が刺さる・・・

「ごめん、睨まんでもらっていい? 別に奈央に隠してた訳ではなく、なんか忙しくて・・・。いや本当の話、さやかちゃんとのドライブ以外は何もない。神に誓って」

「先に約束した奈央より先にさやかを乗せたのが腹が立つ・・・」

「ごめんて・・・。今度行こうよ」

「ひらめらしいというか・・・。なんかなあ・・・」

なんとなく、このままでは精神的に追い込まれる気がしてきました。

「そう言えば、仕事ができる『ひらめ』って凄くない? テキトーでやる気がないのに仕事ができる・・・。100%嫌な奴、確定だよね。もう同期会には行かん方が良いね。なので、もう行かない。決めた。絶対に絡んでくる輩がおるし、女子たちのケータイ番号もコンプリートしたし、場が荒れるから行かない・・・。奈央さん、後はよろしく!!」

「でも、行かないと『ひらめは変わった』とか思われちゃうんじゃない?」

「ダメかな・・・」

「・・・」

荒れに荒れた飲み会の話は以下の投稿に続きます。

望むポジションがあるなら、努力の前にやることがある - 底辺からの視線

人間の評価は勘違いで生まれ、本当のことは誰も知りたくはないという話は以下の投稿で解説しています。

ヒトの評価は勘違いでされる。そこを忘れてはいけない - 底辺からの視線